PHOTO: アレックス・カッツ氏と MIE (岩月美江) ペインティング “スリー・ウーマン”の前で。
このペインティングの右側がMIE。カッツ氏によって描かれたもう一枚の MIEのポートレートは19世紀の巨匠彫刻家、ブランクーシの一家によって購入される。ニューヨーク派ペインターとして50年代から他に類を見ない独自のポートレートスタイルを確率した、今生きているポートレートのアーティストとしてはアメリカで一番有名といわれる、アレックス・カッツ氏。
彼のペインティングは最低でも一枚2千万から一億円といわれ、世界のオークションなどでコレクターに売却されています。
そのアレックス・カッツさんが、MIE(岩月美江)をモデルに起用し、MIEの数枚のポートレートを描きました。今回はその記念にアレックス氏へ、MIE
(岩月美江)とジャパン・ソサエティー・ゲストキュレーターのエリック C.シャイナー氏が独占インタビューした内容をお届けします
MIE:まずはじめに、アレックスさん、私をモデルに起用してくれて、本当にありがとう。私は大学で芸術で卒業しましたが、ペインティングを専攻していました。そのときからいつもアレックス・カッツさんの絵が大好きでした。アレックス・カッツさんはすべてのアート・ヒストリーの中で、最も影響のあるポートレートのペインターだと思っていました。だから私が働いていたギャラリー(イセ・カルチュラルファンデーション・ギャラリー)アレックス・カッツさんの”アーティスト・トーク・イベント”をする事になった時、カッツさんに会える、と思ったら本当に嬉しかったんです。
カッツさんのペインティングはとてもシンプルでありながら、そのブラッシュストローク(筆づかい)が素晴らしく、どのアートのムーブメント(派/主義)にも属さない独自の強いスタイルがあります。カッツさんの絵のモデルに成る事は夢のようなお話でした。本当にありがとうございました。
アレックス:ぼくも光栄だよ。
MIE:でははじめに、私の質問からです。カッツさんの作品の中に私が感じるリアリズム(写実主義)とシュール・リアリズム(超現実主義)の関連性について、聞いてみたいのです。カッツさんは谷崎潤一郎の本が好きで、私に、谷崎潤一郎の”マッド・オールド・マン”がすばらしいから私に読んでご覧、とすすめてくれました。それは一人の老人男性がかれの実際の生活と創造の世界が共存させているかのようなストーリーでした。もしくはその世界は主人公の潜在意識の中に創られた仮想現実の様に思われました。
カッツさんはアブストラクト・エクスプレッショニズム(抽象表現主義)の後に、最初にパーセプチュアル・リアリズム(知覚的写実主義)を描いた画家だと思いますが、カッルさんの絵はシュール的な要素もあるように思えます。
例えばアートヒストリーを例にとってみても、カッツさんはまねのブラッシュ・ストローク(筆遣い)の流動性に影響をうけたそうですが、マネ自身はベラスケスに影響をうけています。カッツさんはマチスとアシュリーゴーキーの1949年の展覧会にも影響を受けられたと聞いていますが、ゴーキーもオートマティスム(自動記述)などの潜在意識によって創られるシュールてきなアイデアに影響を受けています。ゴーキーはヨーロピアン・シュールレアリズムとアメリカン・アブストラクションの橋渡し的存在のアーティストだったとおもいますが、このようにアーティスト達がそれ以前のアーティストやムーブメントに影響をうけていますが、私にはカッツさんの作品もオートマティスムやイマジネーションなど、潜在意識に内在するアーティスティックな視点の何かと関連性があるようにも思えますが、それについてはどう思われますか?それとも人物の肖像の似通いに重点をおかれているんでしょうか。
アレックス:私のペインティングは容貌なんです。とてもシンプルに“容貌”をみているんです。しかし、自分の目からではなく、自信のカルチャーで租借したものの目から見るんです。自己のカルチャーから租借するけれども、現代の目で捉えて、新しいものに変えるんだ。私がしようとしているのは、不定なものを定義付けようとするのです。私にとってはそれがどんな感情や想像やアイデアよりも野望に満ちた事なんです。それは基本的にはとてもシンプルな事なんです。ほとんどのアートがレトロであります。新しい様にみえますが、それは古い。大事な事はなにか新しいものを創る事。本当にシンプルな事なんです。
MIE:カッツさんのペインティングは一瞬を捉えられているように見えます。その一瞬とはカッツさんの世界だけに存在する一瞬です。
アレックス:そうだね、ほくはそれは瞬時の光だと思っているよ。ぼくの光はとても早い、ほんとうに即時のものです。ぼくはデクーニングの光はとてもはやいと思うし、クラインの光もとても速く、そういう早い光が好きなんだ。印象ははたいていの場合、遅い光です。それは光の上の光です。マシューブラディーの作品とでもいうか、私の作品は瞬間のものなんです。その瞬間を捉える為にそれを助けるものはありますよ。サージェントのライトはとてもはやい、それがかれの作品の中でもっとも独特な部分と言えるでしょう。
エリック:速いライトと言えば、パパラッチや電球の一瞬の光とどうゆう関わりがあると思いますか?
エリック・C・シャイナー
ジャパン・ソサエティー
ゲスト・キュレーター
"Making a Home: Japanese Artists in New York"
Fall, 2007
アレックス:私とWEEGEE(写真家)の大きな違いは、ウィージーはもう現在のものでは無いという事。ペインティングをするなら今にあった事をしなければいけない。でもウィージーはすばらしいとおもうよ。
MIE:早さと言えば、カッツさんはジャクソン・ポロックの“クイック・ペインティング”にも影響をうけていますね。
アレックス:ええ、もちろん、ジャクソン・ポロックの光はとても速い。それは自由な光だ。そしてそれはパリからの脱出法だったのだろう。(一同笑)
あの国は地方のモダンの国で、あの頃の地方のモダンはおもしろかった。しかしポロックがやってきて、突然もうピカソやマチスの後を追わなくて良くなったんだ。新しい方向性を見いだしてくれた。そしてそれは光だったんだ。即時生の有る光、そしてジェスチャーがペインティングを変えたんだ、光とジェスチャーが。
MIE:そして1949年のアシュリー・ゴーキーの展覧会がカッツさんに影響を与えたと聞いていますが。
アレックス:いや、アシュリー・ゴーキーの展覧会はものすごかったけれど、その同じ年に行われたマチスの展覧会はこの世のものとか思えなかったほど良かったと思ったよ。それはスリング・チェアとあたらしいペインティングの数々だった。私が通っていた学校、クーパーユニオンの先生がいったんだ、“この展覧会を見に行きなさい、彼は”老人“だけど描ける画家だ!”とね。(笑)そして私の先生は65歳だった。しかし私にとって65も80も違いはなかった。
それで、その展覧会を見に行ったんだよ。あのマチスのショーはその当時の人生で見た事もないような展覧会だったんだ。ゴーキーの展覧会も素晴らしかったけど、実際マチスのショーは強力だった。一体誰があんなにうまく描けるのか?と思ったね。
MIE:じゃあ、カッツさんのカットアウトの作品はやはりマチスから影響を受けていたんですね。
アレックス:そうだよ。50年代初期のマチスのカットアウトだね。他にもあったね。デクーニングもカットアウト作っていたし、マーク・トビーもだね、そのころ広まっていたんだよね。
MIE:カッツさんが始めにカットアウトを作っていた頃は小さいサイズでしたよね
アレックス:ああ、とても小さかったよ。
MIE:どうしてあのサイズにしたんですか?
アレックス:あれは大きいペインティングに対応していたんだ。その頃みんな大きいペインティングばかりやっていたから、僕は逆になにか小さいものを創りたかったんだ。いってみれば大きいペインティングを描いて大胆になる事が主流だったときで、それはたくましい世界というか、その頃の自分にはとくに関係の無い事だった。僕は小さくてもなにかそれに対抗する強いものをつくれると思ったんだ。そして創ったんだ。それらすべてが2005年の夏よりコルビーカレッジで展示されているんだよ。
MIE:素晴らしいですね。カッルさんは400点ものペインティングをコルビー大学に寄付されたそうですね。
アレックス:ああ、でもコラージュは70作品ぐらいだよ、あれは5年間位創っていたんだ。
MIE:コルビー大学の美術館にアレックス・カッツ館ができるんですね。素晴らしい!
アレックス:そうだね、いい事だよ、自分のペインティングをいつでも僕が見たいときに見に行けるよ。(笑)
MIE:美術館はカタログを発行する予定ですか。
アレックス:ああそうだよ。
MIE:もしカッツさんが今までの作品の中で、一番すきな作品を選ぶとしたらどの作品ですか?
アレックス:分からないなあ。ブルー・アンブレラ(青い傘)か、ブラック・ドレス(黒いドレス)がほとんどの人が好きなペインティングだけれど、僕はやっぱり。。。。ううん。。でもわからないなあ。。。どれが一番好きか、っていうのは難しいなあ。だってみんなそれぞれに違うからね。。そしてもし自分がペインティングに一生懸命に創ろうとすると、その作品が嫌いになる。(一同笑)
好きだなと思うペインティングは10年後には好きではなくなったりするんだ。
わかるでしょう?自分でコントロールする事が出来なく苦悩した作品があるよ、そういう作品の方が成功に描かれた作品よりももとエナジーがあったりするんだ、わたしはそうゆう作品が良く好きだったし、家にあってもいいと思う。
MIE:私が一番好きだったのは、カップルが森の中で手をつないで歩いているイメージのものでした。
アレックス:ペインティングをして良く出来たかなと思って人にみせると、そのペインティングを見た人が、前でなき倒れる、面白いものだね。ただ自分にとってはベストをつくして作成しただけなんだ。自分が若かった頃に他のペインターによって受けたように自分は自分のペインティングにはそういった影響をうけないよ。
エリック:ギャラリーや美術館へ行く人達はみんな違う視点を持ってくるという事ですよね。
アレックス:そうだね、みんな人によって絵の解釈法が違うからね。
エリック:だれがどんな所にクリックするかは分からないですよね。
アレックス:そうだね、分からないものだよ。
MIE:あ、これ、これです。私の一番すきなカッツさんのペインティング!(アレックスのカタログをめくりながらイメージを見つける)タイトルは “サマー・トリプティック”1985年の作品でした。(MIE
アレックスに3組のカップルが手を繋いでもりを歩くイメージを見せる。)これは本当にその瞬間を捉えていると思うんですが、どうしてこのトリプティックのアイデアになったんでしょうか?
アレックス:これはね。シリーズがあって、そのシリーズでは男女がふれあうところ、というテーマから始まったんだ。僕はこの時、人がお互いにふれあっている絵を描きたかったんだ。それではじめのは、男女がお互いにふれあっているものだった。それが技術的には一番よい出来だった。それから女性同士がふれあっているのをやったんだ。全然違うタイプの女の人達のね。運動選手やレズビアンがいましたよ。彼女達は全然抱擁の仕方が違いましたね。それから男性同士がふれあっているもの描きましたよ。それから森にいるカップルのイメージを描きました。それは最も叙事詩的なもので、なにか手の握り方に関連するもので創りたかったんです。時の中にながれるある動き、、それはどこかはかないもので。。他のほとんどのものはもっとヘラルディックで。。このイメージはそれに属するね。
MIE:私はカッツさんは以前に写真からも作品を描いたと思いましたが。。
アレックス:ああ始めの頃の作品は写真から創りましたが、顔が無いものでした。すごい初期の頃にね。そして今また写真から作成しています。70年代には時々写真から作成したんです。そしてその写真がすきだったら人にお願いして写真と同じポーズをしてもらうんです。息子ビンセントと彼の友人がモンサンミッシェルの山でとった写真がすきだったので、ビンセントと何人かの彼に友人にメイン州の埠頭でポーズをさせたんだ。それは同じ環境設定でね。最近の4、5年間はビーチで写真を撮り始めて。。。ジェスチャーを捉えられるからね。さもないとああいうジェスチャーはできないからね。
エリック:最近はインターネットで沢山のイメージがあふれてきていて、ジェスチャーや動きについての考え方も変わってきていますよね。
アレックス:ええもちろん、写真から得るイメージの量は数えきれないよ。都市のあちらこちらで写真を撮って、そのイメージが頭に残る、みんなフォトグラファーはリアルな写真をとってイメージが頭にのこる。みんなフォトグラファーはリアルな世界だと思い、そのネオンなども取る。魅惑的な事なんだろうね。
僕はクイーンズで育った。ある一人の子供で農家の子がいて、リッチモンドヒルに土地をもっていて、それをうってリタイヤしたよ。だからその親は小さい家に住んでお金持ちだった彼の息子と僕が道に立っていて、彼は400ヤードもむこうを見たんだ。2つの都市を超える位遠い先を。そこにはえらく小さい点は見えるだけ。でも彼は“あれは○○だ!”といったんだ。私は8歳位でこの人はなにを話しているんだろう?と思った。僕は視力は良かったし、小さい点は見えた。だけどそんなに遠くにあるものが何なのかは分からなかった。彼が言って、それで初めてそれが何だか分かった。彼は人の歩き方で誰であるかそんなに遠くから分かったんだよ。でもそれは親譲りで、父親もみて分かるんだよ。だって、農場にいるから誰がくるかを知らなくちゃいけないし、だれだか分かる事ができて。人は結構視覚に優れている人はいるけれど、そういう風にではないよね。
エリック:面白い話ですね。
アレックス:そうだろう?
エリック:うん、とっても。シルエットと足ぶみで分かるんだ。
アレックス:何年か経ってメイン州のヘラジカを描こうとしたんだ。ガイドと一緒にいったんだ。ガイドは小さい点をみて、それが何かを分かったんだ。僕は小さい点はみれてもそれが何かは分からなかった。もし彼が教えてくれば多分なにか分かっただろう。鳥はこんなに小さい点にしか見えなかったんだから。
エリック:アフリカのサハラにいるみたいですね。ガイドが半マイル先の何かを見て、それが何かを知る事が出来る。
アレックス:僕は空をみて、レインコートが必要だな15分後に雨が降りそうだから“と言ったりする。でもほとんどのニューヨーカーはニューヨークの空を見ないし、注意も払わないか、情報を得ようとしない。僕は人々はものを人それぞれの文化背景から見ようとすると思う。だからさっきエリック君がいっていた事にもどるけど、すべての人はものをちがうように見る。かれらの文化の中で、文化の外ではゴンブリッジは、アフリカン・アートはシンボリックで印象派は写実的だと言った。僕は、“それは一体誰にとって?”と聞きたかったんだ。
エリック:そう、もちろん、“ 一体誰にとって?”ですよね。
アレックス:アフリカ人にとっては、印象派のペインティングはリアルではない、それは全然説得力がなくて、かれらのアートこそリアルなんだよ。それは全く違うカルチャーで、違うものの見方なんだ。そして西洋のアフリカ文化と私たちの文化の歴史ぼ古さはどうせ同じ位だしね。人々はそれらを原始的と言う。しかしそんな事は全然ない。そして有名なアート・ヒストリアン、ゴンブリッチはそういうミスをおかしている。その一文でもう彼の言う事は聞きたくなくなって、それからもう彼の本を絶対に読まなくなったね。
エリック:それは僕が思っていた事と全く同じですよ。アートヒストリー全体に一貫して言える事ですよね。
アレックス:ああ、一言そんな事を言えば、彼の思考がどれだけ浅いかが分かるね。
エリック:それは沢山のアートヒストリアンが彼らの専門分野で狭すぎる視野を持っているかという事に驚かされますね。
みえ:
アレックス:彼らは彼らの専門分野以外を見る事が出来ないんだ。目隠しをされているようにね。
僕がアートスクールに通っていた時に文章を書くのがうまい男がいてね。それば信じられない位に嘘ばっかりの文を、よくもまあ、あんなに沢山かけるという感じで、、よく皆で笑ったものだった。そしてその先生が圧倒されちゃって、先生は、“これは盗作に違いない!でも証明してる暇なんかない!”と言っていたよ。しかしそれは盗作では無くって、ただのデタラメだったんだ。(笑)とにかく、この男はアート・ヒストリアンになろうとしてて、その後彼を数年見なかったんだ。ある日、メトロポリタン美術館で偶然出くわして、なにをやっているんだ、最近僕はハーバード・レイドの面白い本を読んだよ、といったら、彼は、
“僕の時代は17世紀だから17世紀の本以外は面白い本しか読まなかった。それで、わかるだろ、ハーバードレイドは面白くないから読まなかった”だって。どう思う?それがアート・ヒストリアンかね?。ベルティングの“デス・オブ・アート・ヒストリーを読んだ事ある?エリック:第一章しか読んでないから読んだうちに入らないですね。
アレックス:彼が言っていた事は。。彼が言わんとしていた事はドイツから始まって。。アートヒストリーは言ってみれば18世紀から始まって、その前には存在しなかった。そしてドイツ人達はそれを凍結させてしまった。ラファエロや、ミケランジェロがいて、、彼らは頂点にいた。僕の先生、ズッカーは、20世紀はまだ私たちにとって近すぎて、批評する事が出来ない、と言ったよ。新しすぎるからアート・ヒストリーではない。それはベルティングの言った事のようで、オープンなんだ。近代の世界ではいろんなものが動いているし、批評は沢山ある。
ドイツの本はまるで爆弾の様だった。そういえば先生は僕に彼のために文章を書かせた事があったよ。でもドイツ語だったから、僕は読むことはなかったね!(笑)。
MIE:カッツさん、好きな哲学者はいますか?
Alex:アレックス・ジョーン・ラウルスだね。なぜなら今に役立つ思想だからね。
彼はモラルの体系を法的な体系に置き換えたんだ。それは全世界に大きな助けを及ぼしたと思うよ。
MIE:アメリカの言語、そして人々のペインティングへの知覚に関しての話に戻りますが、オーストリアの哲学者ウィッテゲン・シュタインが言った言葉で、“目にみえるものは言及することができない”というのがありますが、これをどう解釈しますか?
アレックス:そうだねえ、、それは、いってみれば無意識の知性とでもいうか、どうにかしてその領域に入っていこうとする。。。さもないと、ただのアイデアに終わるアイデアに関して言えば、世の中には沢山の自分より頭のいい人達がいて、僕がアイデアビジネスに手を出したら馬鹿を見るだろうよ、私は十分に頭が切れるほうだけど、もっと沢山の頭の切れる人たちがいる。しかし、無意識や潜在意識の脳の中に入ると、物を作ることができる。そして、私が思うに、いいペインティングというのは、説明できるわけがないんだ。なぜなら何かそこに未解決な問題が隠されているからだよ。そうしてそういう部分を(説明ができないという事を)かれは言っているんだと思う。たとえば批評家に君のペインティングを説明しろといわれて、ずべてを説明することはできないといったら、君はクレイジーだと思われるだろう、しかしできないはずなんだ。ある一部分が消えたら違う方向にものを見るだろうし、そしてそれは意味を成さない。それは未解決の問題こそが人に答えを探せさせ続け、成長させるものなんだ。
MIE:なるほど。(アレックスの回答にうなずく)さて、カッツさんのペインティングは最近どんどんファッショナブルになりつつありますよね。今カッツさんはファッションに影響を受けていると思いますか?
アレックス:ペインティングというのはファッショナブルなものだよ。僕はファッションでいろんなペインティングを試しているんだ。しかしこれらはまったく異なるもので、僕はいつもファッションはかない所が好きだったんだ。70年代から始まって、何かのエナジーから始まったんだ。僕は僕のアートがファッションとは関係ないと思っていた保守的なアートヒストリアンも好きだけど。
面白い話が、バランティンはクラシックバレエについてこう書いた。バレエはファッションに連結している。毎年バレエのドレスの服のすそを変えなければいけないとね。(笑)僕はそしてペインティングも同じような事ではないかと思うんだ。誰もそのアーティストが極上のアーティストでない限り、5年前のペインティングを欲しいとは思わないでしょう?
エリック:それはまるでクチュールの様にいつも変化しているんですね?
アレックス:もちろんだよ。自分の心根をみがいて、、、デザイナーは心根がない。デザイナーにとっては、次々に新しいアイデアを出していくのが簡単で、でもアーティストには心根があって、その心根がなければそのアーティストは死んでいるも同然なんだ。だからアーティストとしては常に心根を持ち続ける事が大切で、そこが難しいところでもある。それは意識とエゴのバランスなんだ。外界にある意識は心根に影響するんだ。
エリック:でもファッションにも心根があって、ブランドのアイデンティティーというのがありますよ。
アレックス:だれだったか、バレンシアガだ、彼は60年代に優美に対応する事ができなかったんだ。彼は王様だったし、彼の作品は素晴らしかった。他の誰よりもね。しかし60年代に入って、彼は芸術性をもちこたえられなかった。
エリック:そうですよね、バレンシアガは何十年も溝にはまってましたけれど、ほんのごく最近に再出現して来ましたよね。
アレックス:しかし彼はもう死んでいるんだ。彼らは他の物を復活させる事はできるよ。しかし60年代には対応できなかったんだ。
MIE:ちょっと、それではこの辺で、カッツさんが私をペイントして私の夢がかなったように、カッツさんの夢もかなえて差し上げたいのですが。今度はカッツさんがペイントしてもらいたいアーティストにカッツさんのポートレートを書いてもらおうと思うのですが。。
アレックス:自分がペインティングになりたいと思ったことはないんだよ。。
MIE:でもカッツさん以前にチャッククローズのモデルしたじゃないですか?
アレックス:だってあれば僕は彼が僕を魅力的に書くつもりではないことをわかっていたからだよ。(笑)でも彼はとてもいいアーティストで、彼のアート作品になることは素晴らしいkとだと思ったよ。
MIE:カッツさんは十分素敵ですよ、私がカッツさんの前でポースしているときにペインティングしているカッツさんが後ろの窓からの光をうけて輝いているのをみて、今度は私がカッツさんを描きたい、といいましたよね。
アレックス:ありがとう!
MIE:アートから話題がそれますが、カルチャー的な質問をしたいと思います。じゃあまず、
朝ごはんはなにを食べますか?
アレックス:それはいい質問だね。。僕はビタミンをとる。オレンジと、シリアルと、なんかそういう軽いもので、、いっぱいのお茶とバナナ。毎日同じだよ。
MIE:ジムにいってワークアウトしてますよね。
アレックス:美容柔軟体操を毎朝行うよ、400回のプッシュアップと300回の腹筋運動を毎日するんだ。真剣にね。夏には十種競技もするよ、水泳とか、自転車こぎとかね。
ずっとスタジオに閉じこもっているんじゃなくて、どれだけ動いて食べるかは大事だね。
MIE:もうひとつの質問はどれがカッツさんの好きな靴ですか?靴にまつわる思い出おnストーリーを教えてください。
アレックス:変なしつもんだねえ。。(笑)えーと、これは。。ワークシューズ(笑)。
これらはワークシューズでは一流品でね。レッドウィングって言うんだ。キャデラックだよ。この他にはトップラインの靴はもってないね!(笑)
MIE:カッツさんは日本のビジネススーツが好きだって言ってましたよね。
アレックス:ええ、僕はそれぞれの文化は人々を違う風に見せると思うんだ。日本のビジネススーツの色はとても鈍い色だよね。しかしその色は日本人の肌を美しく見せる。顔がそんなに目立ちもしないし、とてもまじめだよね。
しかし英国のビジネススーツは孔雀の様に華麗で、もっとスタイルがあるんだよね。しかし日本人にはナルシストっぽくて目だちすぎるんだ。フランスのスーツはそんなによくないね。やつれたウエストで、あまり綺麗なウエストをしていないんだ。英国のスーツは美しいのにね。英国のスーツは型がしっかりしていて、肩から床まで美しいひとつのラインでつながっているかの様だよ。それはズボンのウエストラインを大きくしているからなんだ。ズボンがジャケットの裾から出てきて流れる。英国スーツはそうしたラインの流れの美しさがある。日本のスーツはもっと角ばっていて、アメリカのスーツは英国のスーツよりは日本のスーツに似ているね、
ドイツのスーツもとても似ている。英国やイタリアのスーツに比べて流動的でない。で、とても小柄でさっぱりとしていて、ドイツ人をかっこよく見せるよ。イタリアのスーツは流動的な仕立てだね。体に密着して痩せた人によく似合う。痩せた人はイタリアのスーツがよく似合う。
MIE:そういえばカッツさんは前ズート服が好きだったとか。。
アレックス:ああ。ズートスーツで育ったんだ。高校時代はズートスーツを着て通ったものだった。ズート服の後は英国のスーツが好きになるよ。(笑)基本的に同じだからね。ズボンはとても太くて、、線を流動的に見せるためなんだけど。。アルトマンがズート服で映画を作ったね。そしてちょっと作り上げてたよ。カリフォルニアのズート服は同じものではなかった。ズボンはもっとぴったりしてて、流動的なラインはない。そしてそれがすべてだったんだ。
エリック:ファッションを通じていろんなカルチャーを語っているのをきいて思い出したんですが、ぼくが香港旅行に行ったとき、イタリアンスーツをインド人の仕立て屋に作ってもらいましたよ、
アレックス;ああ、日本ではイタリアよりいいイタリア料理を食べられるよ。素晴らしいイタリア料理をね。ここではネープルからの人の料理であまりうまくない。。NYでほんとにいいイタリアン料理を見つけるのはむづかしいよ。
エリック:でも日本は全域に渡ってうまく作りますよね、
アレックス:そう、それは寄せ集められた文化、日本には日本の宗教があるけどそれぐらいじゃないかな?(笑)
日本人は全てをうまくやってのける。(笑)ペインティング以外は(笑)
MIE:じゃあ例えば、村上隆さんのペインティング、あるいはスーパーフラットのムーブメントをうけたペインティングとか、はどう思われますか?彼のお弟子達が同じようなスタイルで描いていますが。。
アレックス:僕は沢山の異なるアートや人がいると思う、日本に行けば人々の家に飾る様の沢山の小さいものを売る店がある。いろんな種類のアートがそれぞれの種の人々の為に存在している。アートはあればあるほどよい。政府は以前までアートを買うプログラムがあった。その地域のアーティストに空港の壁画を創らせたりしてね。それは素晴らしいプログラムだった、人々がアートを育てていけるからね。学校はグラフィックアートがあるべきだ、なぜならもう十分に沢山のアーティスト達がいるからね。ぼくは全ての人々にアートを鑑賞してほしい。人々がアートを排他的に感じるのはそれはアートが彼らの文化の一部でないからだ。。僕たちの国、米国はヨーロッパに比べたら何の文化もない。ドイツにいったら、、僕が初めて行ったのはケルンで、ケルンはバルトモアと同じくらいの大きさだった。ケルンは一夜に5つ位のコンサートがあって、バルトモアは1つのベースボールチームしかない。(笑)。アートはあればある方がいいのだ、全てのアートワークはそれにふさわしい空間があるものだ。たとえば、このペインティングは学生寮にいいな、、から始まって、またあるものは家に飾ってもよくて、でも美術館とまではいかないものとか。。僕の妻は以前ハンツ・ホフマンの展覧会をみて、“オフィスにだけね!”と言ったよ。(笑)
エリック:アートは文化に依存するだけでなく、人々の視点が左右しますよね、その上空間にも依存するんですよね。
アレックス:ああ、とっても複雑だよね。ほんとに。一定の場所には一定の作品が似合う。
エリック:そしてそれはロー&ハイカルチャーの分別には全く関係がない領域ですよね。
アレックス:それは芸術的美しさという事ではないんだ。社会的需要だよ。
エリック:公共アートのプロジェクトなどで作品を創った事はありますか?
アレックス:ああ、タイムススクエアの大きなビルボードをやったよ。裁判所の壁画もやった。それに大きなカットアウトの作品がシカゴにあるよ。おもしろかったよ、タイムススクエアのが一番楽しかった、ほんとに、他のは仕事だったね。(笑)
MIE&エリック:カッツさん今日はどうもありがとうございました!!
アレックス:ああ、楽しかったよ!
Jan.2006 Art and Antiques
GOTO
Mag Top Page>>
|